ITILとは?

ITILとは、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワークです。 元々は書籍群でしたが、現在はデジタル化が進んでいます。 ITILを活用することで、企業は効率的かつ効果的にITサービスを提供し、顧客満足度を高めることができます。

現在の最新版は「ITIL4」となっており、世界のデジタルサービスプロバイダーや斬新的なメーカーに利用され認められたフレームワークで、国内外のシステム運用の基準として多くの企業で活用されています。
デジタル時代のサービスの設計、管理、提供といったITサービス管理者に必要な基盤知識を身に付けることができるほか、組織においてもビジネスの変化や変革、成長を実現するために役立てる内容となります。

参照:
ITIL 4 Foundation Certification | Axelos
ITIL®4 ファンデーション | PeopleCert

ITILの歴史

「ITIL」の歴史を振り返ると、英国政府によりIT運用の効率化・標準化を目的として、1989年に発行されたものがI初版の「ITIL V1」となります。
その後、1999年にリリースされた「ITIL V2」に続き、2007年には「ITIL V3」、2011年にはV3の基本構成と概念は変わらず、明瞭さ・一貫性・正確さ・網羅性について改善を施した「ITIL 2011edition」へとアップデートが行われました。そして、2023年始時点では2019年に英国のAXELOS社より発表されたものが最新版の「ITIL4」です。

ITIL V3とITIL4の違い

前述したとおり「ITIL」は時代とともに改訂が行われ、現在のバージョンでは「ITIL4」が最新版となっています。では前バージョンである「ITIL V3」と「ITIL4」を比較すると、どのような点に違いがあるのでしょうか。まずは、それぞれの特徴に触れた上で双方の違いについてみていきましょう。

ITIL V3

2007年に公開された「ITIL v3」では、サービスライフサイクルの概念が新たに加わり、全体のプロセスが整理されています。この概念が導入されたことで、IT運用という視点のみならず、戦略・設計・移行のフェーズにおいて、誰がどのようにITサービスに関与するのか明確となります。これにより運用や開発、企画部門などとの連携がスムーズになります。

ITIL4

2019年にリリースされた「ITIL4」は、ITサービスマネジメントのベストプラクティスである「ITIL」の最新版です。デジタル時代の変化に適応すべくサービス管理フレームワークが刷新されています。

「ITIL 4」では、インシデント管理・問題管理・ナレッジ管理といったプロセスと、サービスデスクなどの機能が「プラクティス」と表現されるようになりました。

また「ITIL 4」は、34冊のプラクティス集から構成されています。「ITIL」の優れた部分の統合と、ITとサービスの運営のレベルが向上したことにより、さらに高品質で価値のあるサービス提供をサポートしています。

新たに追加された4つの要素

「ITIL4」では、新たに以下の4つの要素が追加されたことで、急速に進化を遂げる現代に適した「ITIL」へとアップデートされています。

アジャイル:より早く顧客へのニーズに対応すること
DevOps:開発と運用が円滑になり価値を提供すること
リーン:継続的に価値を創出し続けること
ガバナンス:全体を統制・管理すること

ITIL V3とITIL4の違い

「ITIL4」では、従来のITILと基本的な概念が大きく変更されているため、「ITIL V3」と比較するとさまざまな違いがあります。
とくに「価値の提供方法」と「改善方法」に関しては、大きく変更された箇所となります。

「価値の提供方法」については、「ITIL V3」まではIT技術者が利用者にITサービスを提供するという視点でしたが、「ITIL4」では、サービス提供者と利用者がITサービスを共に創っていくという視点に大きく変更されています。
また「改善方法」では、プロセスアプローチからバリューストリームの視点でサービス改善を図るようになっています。

「ITIL V3」と「ITIL4」の具体的な相違点は以下のとおりです。

バージョンITIL V3ITIL4
書籍の数5冊6冊
書籍の構成ライフサイクルモジュール
活動の定義26のプロセスと4つの機能34のプラクティス
価値の提供方法ITがビジネスに価値を提供するITとビジネスが価値を共創する
改善方法プロセスアプローチバリューストリーム

ITILのサービスライフサイクル

ITILでは、ITサービスを戦略的に管理するために「サービスライフサイクル」という概念を採用しています。これは、サービスの計画から改善までを5つの段階に分けて捉えることで、より体系的な管理を可能にするフレームワークです。

サービスストラテジ(サービス戦略)

ビジネスの事業目標に応じて、提供すべきサービスや必要なリソースを検討し、中長期的な戦略を策定します。ビジネスとITサービスとの関係性を整理するための検討項目は以下です。ビジネス領域を決定するための市場分析や、サービス提供における資源確保、ROIやコストの管理を行う財務管理など、多方面から視点で内容を吟味します。

≪検討事項≫
ITサービス財務管理、需要管理、サービスポートフォリオ管理、事業関係管理、ITサービス戦略管理

サービスデザイン(サービス設計)

策定した戦略を実現するために、サービスの具体的な設計を行います。機能などの技術面やサービス品質の検討を行った上で顧客とも合意します。なお設計段階では、費用対効果などを保持しながら戦略を実現するために円滑な運用フローを開発していきます。

≪検討事項≫
サービスカタログ管理、可用性管理、キャパシティ管理、ITサービス継続性管理、サービスレベル管理、デザインコーディネーション、情報セキュリティ管理、サプライヤー管理

サービストランジション(サービス移行)

顧客および他の利害関係者の要件に基づき設計されたサービスを運用のフェーズに移行するために、方法や手段を整理します。その中で発生しやすい変革による組織へのダメージを抑制しつつ、円滑にサービスを移行していくことが重要なポイントです。

≪検討事項≫
移行の計画立案およびサポート、変更管理、サービス資産および構成管理、リリースおよび展開管理、サービスの妥当性確認およびテスト、変更の評価、ナレッジ管理

サービスオペレーション(サービス運用)

サービスデザイン(サービス設計)で合意したサービスレベルの範囲の中で、顧客に向けてITサービスを提供するフェーズです。以下の5つのプロセスでサービス要求を処理していきます。

≪検討事項≫
イベント管理、インシデント管理、要求実現、 問題管理、アクセス管理

継続的なサービス改善

最後のフェーズにおいては、ビジネスニーズの変化に合わせて顧客に価値のあるサービスを継続的に提供し続けるための取り組みです。測定・分析・レビューなどを実施し、ITサービスとそれを支えるプロセスにおいて継続的な改善を行います。
なお継続的なサービス改善は、前述した4つのライフサイクルのすべてのフェーズで実施されるべきものです。ITILでは「7ステップの改善プロセス」に応じて、論理的に改善活動に取り組むことが提唱されています。

ITILのインシデント管理

ITインフラを管理する上で、通常のITサービスやITシステムの停止または、サービス品質が下がることでビジネスの継続やユーザーに影響を与えてしまうインシデント(サービス提供上のトラブル)はつきものです。
「ITIL」には、このような予期せぬインシデントが起こった場合に適切な対策として「インシデント管理」といったプロセスがあります。
ITILにおけるインシデント管理とは、ビジネスへの影響を最小限に抑え、迅速なITサービスの復旧を目的とするプロセスのことを言います。
インシデントを解決へ導くためには、以下のステップを踏むことで理想と言えるインシデント管理を行うことができます。

ステップ1.インシデント発生を認識する
ステップ2.状況を適切に把握する
ステップ3.解決策を立案する
ステップ4.解決策を実施する
ステップ5.状況の回復

インシデント管理時における課題

ITILに準拠したインシデント管理をしていたとしても、業務環境が異なることで課題を抱える企業も少なくありません。ここでは、ITILのインシデント管理を実践する中で、現場で浮上しやすい課題をいくつかご紹介します。

・インシデント管理と問題管理への理解が浅く、本来求められる対応ができていない
・情報共有が十分にされてない
・問合せ窓口の属人化により、ナレッジを共有できていない

インシデント管理を行なうポイント

ITサービスの概要は、各企業によっても違いがあるため、企業に適したインシデント管理を行うことが重要です。以下でご紹介する内容は、最低限押さえておきたいポイントとなります。

一次対応が円滑に進むようナレッジベースを作成すること

比較的軽微な内容の問合せの多い一次対応を効率化するため、対応における個人差を解消し、属人化の防止を目指します。そうするためには、一次対応担当者向けのナレッジベースを作成することが有効な方法と言えます。

オペレーションルールを定義しておく

一次対応で解決できないインシデントが発生した場合は、インシデントの内容によりエスカレーションを行います。エスカレーション先や伝達方法を細かく定義した上で、オペレーションルールの周知を徹底しましょう。

ITIL資格のススメ:スキルアップでキャリアアップを目指そう!

ITILには、ITILの知識を証明することができる認定資格があります。ここでは、ITILの資格の種類をいくつかご紹介します。

ファンデーション

ファンデーションは、ITILの主なコンセプトやプロセス、専門用語を学習し、より深く学ぶための基礎レベルの認定資格です。ITシステムの運用をする人を対象としています。
なお、ファンデーションを取得することで上位コースの受講資格を得ることが可能となります。

プラクティショナ

プラクティショナは、ファンデーションとインターミディエイトの中間に位置する資格です。ファンデーション認定資格を取得していることが必須条件となります。
プラクティショナでは、ファンデーションで習得した知識を実務者として活用していくことを目指します。

インターミディエイト

インターミディエイトは、ファンデーション認定資格を取得していることが必須条件であり、中級者向けの資格となります。

認定シリーズであるライフサイクルモジュールとケイパビリティモジュールの2つで構成されており、それぞれの科目単位ごとに認定されます。
ライフサイクルモジュールは、ITILサービスライフサイクル(SS、SD、ST、SO、CSI)の5つのステージに主眼が置かれています。
またケイパビリティモジュールに関しては、ITサービスマネージメントの職務ごとにプロセスや役割が学習できるよう4つのモジュール(OSA、PPO、RCV、SOA)で構成されています。

まとめ

ITILは、ITSMのベストプラクティスと呼ばれる成功事例をまとめており、ITサービスマネジメントを行う上で重要な存在です。ITサービス提供者は、ITILを参考にすることで、ITサービスを効率的に運営しつつインシデントを抑制することができます。とはいえ、企業ごとに提供するサービスや手法は異なるため、さまざまな課題が発生することも事実です。ITILへの理解を深め、企業に適したインシデント管理を徹底していきましょう。

ITILを学ぶには、書籍やオンラインコースなど、様々な方法があります。自分に合った学習方法で、ITサービスマネジメントのスキルを身につけていきましょう! また、ITILの知識は、IT担当者だけでなく、開発経験者や保守・運用担当者など、幅広い職種で役立ちます。

関連記事:IT統制と内部統制の関係 - 種類や対象、項目を解説

低コストでセキュリティ対策を始めるなら

  • 「セキュリティ対策が求められているが、予算が限られている」
  • 「ひとり情シス状態で、管理負担が大きい」

こうしたお悩みを抱える中小企業の方は多くいらっしゃいます。

予算やリソースが限られている企業では、市販のパッケージソフトが高額で、オーバースペックになりがちです。

弊社の「漏洩チェッカー」は、PC端末の台数や必要な機能に応じて契約内容を調整できるため、コストを抑えながら最適なセキュリティ対策を実現します。

ITの専門知識がなくても簡単に操作できるシンプルな管理画面を備えており、運用負担が少ない点も「漏洩チェッカー」の特徴です。

まずは無料で資料をダウンロードしてお確かめください。

漏洩チェッカー:https://stmn.co.jp/roei-checker/
運営会社:株式会社スタメン(東証グロース市場4019)

著者情報

漏洩チェッカー 編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

漏洩チェッカーは、株式会社スタメンが運営する、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)およびプライバシーマーク(Pマーク)を取得しているクラウドサービスです。東京証券取引所グロース市場上場。