近年、企業において情報漏洩やコンプライアンス違反に対するリスクが一層高まっており、それに伴い、会社のパソコン監視の必要性が増しています。
企業は従業員の労働時間管理や情報セキュリティ対策、さらには業務効率化のために、パソコン監視システムの導入を積極的に検討しています。これにより、企業は労働環境の最適化とリスクマネジメントの両立を図ることが可能になります。
本記事では、会社のパソコン監視の重要性について解説します。
目次
会社内のパソコン監視の必要性
パソコン監視が企業にとって重要である理由は多岐にわたりますが、主に労働時間の適正管理、情報漏洩の防止、業務効率の向上、の3つの要因が挙げられます。それぞれの要因がどのように企業の業績向上に寄与するかを以下で詳しく見ていきます。
労働時間の適正管理
労働時間の適正管理は、従業員のワークライフバランスを守り、長時間労働を是正するための重要な要素です。日本では過労が社会問題となっており、企業には従業員の健康を守る責任が強く求められています。
パソコン監視を通じて、従業員のログイン・ログアウト時刻やアプリケーションの使用状況を正確に記録することで、労働時間を把握し、過重労働を未然に防止することが可能です。
さらに、これらのデータは勤怠管理システムと連携させることで、従業員の労働時間をリアルタイムでモニタリングし、残業時間の過度な発生や労働基準法違反を抑止できます。
勤怠データは給与計算や残業手当の正確な計算、人事評価の基礎資料としても活用され、労務管理の精度が向上します。
適切な労務管理は、従業員のモチベーション向上や企業のコンプライアンス強化にも貢献し、企業全体の健全な運営を支える重要な柱となります。
情報漏洩の防止
情報漏洩は、企業の信用や競争力に甚大な影響を及ぼすリスク要因の一つです。特に、顧客情報や営業秘密の漏洩は、企業の経済的損失のみならず、社会的な信頼を大きく失墜させる可能性があります。これを防ぐために、パソコン監視は極めて重要な役割を果たします。
具体的には、IT資産管理ツールを用いて社内のパソコンやサーバーの利用状況を管理し、外部デバイス(USBメモリ、外部ハードディスクなど)の使用制限を行うことで、物理的な情報漏洩のリスクを低減します。
加えて、ファイルのアクセス権限を厳密に設定し、機密情報に対する不正なアクセスを防ぐことが求められます。 また、従業員に対するセキュリティ意識を高めるための定期的な教育も必要です。
セキュリティ教育を通じて、従業員が情報漏洩リスクに対する理解を深め、日常業務における適切な行動を取れるように支援します。これにより、企業全体の情報セキュリティ水準を向上させることができます。
業務効率の向上
企業の競争力を高めるためには、業務効率の向上が欠かせません。パソコン監視を通じて、従業員の業務内容やパソコンの使用状況を詳細に把握し、業務プロセスの改善に役立てることができます。
例えば、特定の業務に時間がかかりすぎている場合、その原因を分析し、業務フローの見直しやツールの導入によって効率化を図ることが可能です。 さらに、業務効率化を進めることで、従業員の生産性を向上させるだけでなく、働き方改革の一環としても機能します。従業員がパフォーマンスを発揮しやすい環境を整えることは、企業の成長にとって重要です。
また、データに基づいたパフォーマンス評価は、従業員に対する公平な評価基準を提供し、結果的にモチベーション向上やキャリア開発の促進に繋がります。
会社パソコンの監視の方法
企業がパソコン監視を行う方法にはいくつかの選択肢があります。主な方法として、ログ管理システムの活用、PC操作ログ管理、IT資産管理が挙げられます。これらの方法を駆使することで、企業はより高度なセキュリティと業務効率を実現することが可能です。
ログ管理システムの活用
ログ管理システムは、パソコンやサーバーから発生するあらゆるログを収集し、保管し、分析するためのシステムです。このシステムを導入することで、企業はセキュリティ対策やコンプライアンス遵守、さらにはシステム運用管理に役立つ情報を常に把握することができます。例えば、従業員のWeb閲覧履歴やアプリケーションの使用状況、ファイルアクセス履歴を収集・分析することで、潜在的なセキュリティリスクや業務上の無駄を見つけ出すことが可能です。
ログ管理システムは、セキュリティインシデントの早期発見と対応を可能にし、結果的に企業のリスクを大幅に低減する効果があります。また、法的なコンプライアンス要件に従って適切に管理することで、企業の信用を守ることができます。
PC操作ログ管理
PC操作ログ管理は、従業員がパソコン上で行った操作内容を詳細に記録する手法です。これにより、従業員の業務内容を正確に把握し、情報漏洩の防止や内部不正の抑止、さらには業務効率化のためのデータを収集できます。具体的には、従業員のキー入力、アプリケーションの使用状況、Webサイトの閲覧履歴などが記録され、これらのデータを基に業務改善策を講じることが可能です。
この方法により、従業員の行動に対する透明性を高め、企業全体の業務プロセスを最適化できます。また、監視の結果をフィードバックすることで、従業員に対する適切な業務指導が行いやすくなり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
IT資産管理
IT資産管理は、企業が保有するIT資産(パソコン、サーバー、ソフトウェアなど)のライフサイクルを適切に管理するための手法です。これにより、コスト削減やセキュリティリスクの低減、さらにはITサービスの品質向上を実現することが可能です。IT資産の棚卸や管理の手間を大幅に削減し、IT資産の利用状況をリアルタイムで把握することで、不要なライセンスの整理や適切な投資計画の策定が進みます。
また、IT資産管理ツールを導入することで、IT資産の利用状況を一元的に管理し、セキュリティ対策を強化することができます。例えば、特定のソフトウェアやハードウェアのライセンスが適切に管理されているかどうかをチェックし、不要なライセンス費用を削減することが可能です。
会社パソコン監視でどこまで見える?
会社のパソコン監視では、多様な情報を取得することができます。まず、キーボードやマウスの使用状況から、従業員の作業スピードや入力内容を把握できます。さらに、アクセスログの分析により、従業員が訪問したWebサイトや使用したアプリケーションの滞在時間、履歴を確認することが可能です。
加えて、パソコンに内蔵されたカメラやマイクのログデータから、従業員の在席時間や勤務中の態度に関する情報を得ることができます。技術的には、メール、ブラウザ、アプリケーション、カメラ、マイクなど、ほぼすべての側面でのログ監視が可能です。これにより、企業は従業員の業務状況を非常に詳細に把握でき、効率的な管理手段として活用できます。
ただし、このような広範囲な監視には、従業員のプライバシーへの配慮や法的・倫理的な観点からの検討も必要です。企業は監視の目的と範囲を明確にし、従業員との信頼関係を損なわないよう適切に運用することが重要です。
あなたの会社の社用PCは安全? 従業員のプライバシーとセキュリティ対策の境界線とは?
社用PCは、従業員が業務を遂行するために会社から貸与されているものですが、従業員にとっては私的な情報も含まれている場合があります。会社側は、PCを従業員が業務上適切に使用しているかを監視・管理する義務と責任を有しています。一方で、従業員側としては、社用PCであっても、プライバシーがどこまで守られるのか、気になるところでしょう。
以下では、社用PCの監視における法的リスクや従業員への影響について、具体的な判例などを交えながら解説していきます。
社用PCにおける私的メールのプライバシー権を争った裁判の事例
平成13年12月3日東京地裁で判決が決定した「F社Z事業部事件」は、事業部長(被告)からセクハラ被害を受けていたと主張する女性従業員(原告)が、社用PCで送受信していた私的メール内容を被告に監視されていたとして、賠償請求を求めた事件です。セクハラ行為の事実関係の有無とともに、社用PCにおける電子メール内容の監視はプライバシー権の侵害に当たるかどうかが争点となりました。
会社パソコン監視は「社会通念上の範囲」内で合法である
判決によると、社用PCにおいてプライバシーの侵害に該当するケースとして
・電子メールの私的使用を監視する立場にない者が監視した場合
・監視する責任のある立場であっても、個人的な好奇心で監視した場合
などを挙げ、被告が事業部の最高責任者という立場にあったことから、プライバシー侵害にまでは当たらないと判断されました。プライバシー侵害とみなされるのは、あくまで「社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限る」とも述べられています。
一方で、原告による電子メールの私的使用の範囲は社会通念上の限度を超えており、これが結果的に被告の監視を招いたと結論付け、請求は棄却されました。
この判決から、業務に関して社会通念上の範囲を超えなければ、会社が社用PCを管理目的で監視することは、法的にはOKということになります。とはいえ、「社会通念上」という範囲は人によって感覚の異なるものであり、むやみやたらに社用PCを監視することが必ずしも適切とは言い切れません。法的・道義的に合理性のある条件のもとで社内ルールとして明確に規定し、従業員からもあらかじめ了承を得ておくことが望ましいでしょう。
従業員からの信頼度への影響は?
「信頼してこそ人は尽くしてくれるものだ」とは戦国大名・武田信玄の遺した名言ですが、これは企業とそこで働く従業員の関係にも当てはまります。PR世界大手である米エデルマン社の「エデルマン・トラストバロメーター」によると、日本で従業員から信頼されている企業は、
・アドボカシー(支持)
・ロイヤリティ(忠誠)
・エンゲージメント(結びつき)
・コミットメント(責任感)
の値が高いことが分かりました。つまり、従業員からの信頼度が高い会社ほど、売上や生産性、パフォーマンスの向上などさまざまな恩恵を受けられることを意味しています。
監視は「信頼されていない」という従業員の不満を生む
社用PCの監視は、会社側から従業員に対して「働きやすさ」を提供するための情報収集手段の一つとしてメリットの大きい反面、従業員側からすると「会社から信用されていない」という不満に繋がる恐れがあります。会社に監視し続けることは必ずしも業務を円滑化へ導くものではなく、むしろこのような不満が蓄積していけば、会社に対する信頼度は少しずつ低下していくでしょう。
その結果、会社としての売上や生産性、パフォーマンスが損なわれ、ひいては会社の社会的評価さえもダメージを受ける可能性があります。また、過度な監視を続けることで従業員に強いストレスが掛かってしまうと、体調不良やうつ病、適応障害や摂食障害などに繋がる恐れがあり、社員の健康の観点からも好ましくありません。 これから社内PC監視を導入するという場合には、従業員の信頼度低下というリスクと、監視によって会社にもたらされる利点を照らし合わせ、双方にとって納得感のある状態で実施することが大切です。
PC管理作業の効率化
社用PCを含むハードウェア、PCにインストールされているOSやアプリ、ネットワークで接続される機器など、ITサービスを会社として利用する場合には、すべてのIT資産を適切に管理を行わなければなりません。これらのIT資産は会社の利益を生み出す原資ではありますが、一方で、管理作業に必要以上に時間を奪われているというところも少なくないのが実情です。社用PC監視を導入する際には、このようなIT資産管理に費やされる作業と効率面からも検討を行う必要があります。
IT資産の棚卸しや台帳管理には時間と手間がかかる
多くの会社では、Excelなどを利用して台帳を作成し、手動でIT資産管理を行っています。使い慣れたツールを使用するため管理がしやすい反面、社内に数多く存在するIT資産を常にチェックし、台帳を最新の状態に維持するためには、かなりの時間と手間がかかります。手動作業のため目視確認や手動転記に不備があれば手戻りが発生するうえ、遊休ライセンスの管理やソフトウェアライセンスの保守期限切れにも対応する必要があります。
参考:IT資産棚卸の3つの目的、注意点、効率化の方法を考える | 漏洩チェッカー
IT資産管理ツールを導入してPC管理作業を効率化
社用PC監視を導入する場合には、前提として、社用PCなどのIT資産が適切に管理されていなければなりません。そのためには社内にあるIT資産の棚卸しや台帳管理のワークフローやルールを見直し、IT資産管理ツールを導入して作業を効率化する必要があります。IT資産管理ツールを利用すれば、ソフトウェアやハードウェア、仮想環境やクラウド環境まですべてを一元管理できるほか、ライセンスとユーザーを紐づけることで利用数を自動計算したり、従業員がリアルタイムで台帳を参照・更新できるなど、従来ワークフローを軽減化するさまざまな機能を利用できます。
世界と日本の企業におけるPC管理ツールの導入状況
実際に企業でPC管理ツールがどの程度導入されているのか、欧米企業と日本企業に分けて見ていきます。
欧米企業でのPC管理ツールの導入状況
2021年に、米国の雇用者1,250名を対象に実施されたDigital.comの調査によると、リモートワークを導入している企業のうち60%がPC管理ツールを導入しています。PC管理ツールによって、従業員がどれだけ働いているのか、どのようなWebサイトへアクセスしているか、どこで働いているのかといった情報を追跡できます。これにより、監視対象の従業員の53%は、仕事以外の活動として1日3時間以上を費やしているという結果が判明しました。また、PC管理ツールを導入した企業のうち81%で、従業員の生産性が向上したということです。
また、2021年5月に公表されたExpressVPNのリモート従業員に対する調査によると、2,000名の雇用主のうち、83%が従業員の監視について倫理的な課題があると回答しつつも、78%が監視ソフトを導入していることが分かりました。
Top10VPNは、2019年と比べて2020年3月〜2022年12月は、PC監視ツールの需要が55%増加したと報じています。最も人気のあるPC監視ツールとして「Hubstaff」「FlexiSPY」「Time Doctor」があげられています。
日本のPC管理ツールの導入状況
日本のPC管理ツール導入状況は、大企業と中小企業で差が出る結果となりました。それぞれについて見ていきます。
国内の大企業のPC管理ツールの導入状況
キーマンズネットが2022年10月に実施した調査によると、PC管理ツールを導入している企業は「既に導入済み」が50.2%、「導入を検討」が17.5%という結果になりました。従業員数が多いほど導入率が高くなる傾向にあり、また約100人を超える企業帯ではPC管理ツールをすでに導入済みのところが過半数となっています。PC管理ツールの利用形態に関しては、「パッケージソフトウェア」が最も高く46.8%、次いで「SaaS」(Software as a Service)の21.4%となっています。
国内の中小企業のPC管理ツールの導入状況
2022年に、国内中小企業の30代から50代経営者300名を対象に行った株式会社SheepDogのアンケートによると、PC管理ツールを実際に導入しているのは15%となっています。また、IT資産をExcelなどで管理していると答えたところが8%であり、42%はそもそも「IT資産という概念を知らない」と回答しています。中小企業ではIT資産の管理自体を行っているところがそれほど多くない現状が分かります。
まとめ:会社のパソコン監視について
社用PC監視ツールを導入する際には、法的妥当性・従業員からの信頼度、PC管理の作業効率を考慮する必要があります。導入の際のポイントをまとめると、以下のようになります。
法的妥当性 | 従業員からの信頼度 | PC管理の作業効率 |
◯ | △ | ◎ |
また、国内外の導入状況は以下のように整理できます。
大手欧米企業 | 国内大企業 | 国内中小企業 |
◯ | ◯ | △ |
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漏洩チェッカー 編集部
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