近年、リモートワークが急速に普及し、社内外のネットワークに接続されたデバイスの管理・運用業務が複雑化しています。 その中で注目されているのが、「UEM(統合エンドポイント管理)」です。UEMは、業務用端末を統括的に管理するシステムで、多くの企業で導入が進んでいます。本記事では、UEMの基本的な仕組みや、他の管理ツールとの違い、具体的なメリットや機能、代表的な製品について詳しく解説します。

UEM(統合エンドポイント管理)とは

UEM(Unified Endpoint Management、統合エンドポイント管理)は、コンピュータやスマートフォンなどの電子機器を組織で管理するためのソフトウェア・ツールのことです。

UEMは、組織が持つさまざまなエンドポイントデバイス(Endpoint Device)を管理し、セキュリティポリシーの適用や設定の一元化、デバイスの監視、アプリケーションの配信、データの保護などを行うことができます。エンドポイント(Endpoint、終点・末端)とは、通信ネットワークに接続されているスマートフォンやタブレット、パソコンなどのエンドユーザーが使用する端末を意味します。

またUEMは、BYOD(Bring Your Own Device)ポリシーの下で従業員が自身のデバイスを使用する場合でも、企業データのセキュリティを確保するための機能を提供します。

▼参考
Best Unified Endpoint Management Tools Reviews 2023 | Gartner Peer Insights
What Is Unified Endpoint Management?

UEMとMDM・EMM・MAM・MCMとの違い

エンドポイントを管理する製品としてMDM(Mobile Device Management、モバイルデバイス管理)やEMM(Enterprise Mobile Management、エンタープライズモビリティー管理)製品などもあります。それらとの違いを解説していきます。

UEMとMDMの違い

UEMとMDMは、両方ともエンドポイントデバイスを管理するためのツールですが、UEMはMDMを内包しているパッケージシステムであり、一般的にUEMを導入する企業はMDMを個別に導入する必要はありません。UEMは、モバイル端末を含む全てのエンドポイントを一元管理することができます。

MDMは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末の管理を想定していますが、UEMはコンピュータやスマートフォンなど、あらゆるエンドポイントデバイスを管理することができます。

UEMとEMMの違い

UEMとEMMは、両方ともエンドポイントデバイスを管理するためのツールですが、UEMはエンドポイントの管理に加えて、アプリやデータ、コンテンツなどの管理も可能です。一方、EMMはモバイルデバイスの管理に特化した機能が強化されています。

EMMは、企業のセキュリティリスクの低減を目的として、エンドユーザーが使用する様々なモバイルデバイスを管理することができます。しかし、EMMはモバイルデバイスやパソコンを管理する製品であり、プリンタやIoTデバイスなどの他のエンドポイントを管理する機能はありません。これに対してUEMは、EMMの機能に加え、他のエンドポイントの管理機能を提供します。

UEMとMAMの違い

UEMとMAMは、両方ともエンドポイントデバイスを管理するためのツールですが、MAMはデバイス内に「業務用の領域」を設け、その領域に対してのみ管理を行う方法です。デバイス利用者は、業務に関連するアプリや通信などを、この業務用の領域内で行います。デバイス管理を行う総務部門よくこの手法を行うのは、BYOD(自分のデバイスを持ち込む)環境において最適なためです。

UEMとMCMの違い

UEMとMCMは、両方ともエンドポイントデバイスを管理するためのツールですが、MCMは業務で使用する資料やデータなどのコンテンツを管理するためのツールです。コンテンツを管理する
マーケティングや営業企画の部門が主な利用者です。

これら4つの管理ツールに共通しているのは、「デバイスやデバイス上で利用するアプリやコンテンツの管理を行うこと」です。ただし、それぞれの管理ツールが使用される部門や特徴には違いがあります。UEMは、MDM・EMM・MAM・MCMが持つ機能を網羅しているだけでなく、PCやスマートフォンに留まらずに、IoT機器を含む包括的なデバイスを管理することができます。

UEMの4つのメリット

UEMには様々なメリットがありますが、ここでは主要な4つのメリットを紹介します。

1.BYODの管理の容易さ

UEMの一つの利点は、BYODの管理が容易になることです。BYODは「Bring Your Own Device」の略称で、「自分の端末を持ち運ぶ」と直訳されます。具体的には、個人が所有しているPC、タブレット、スマートフォンといった端末を職場に持ち込み、業務に利活用することを意味します。

従業員が自身のデバイスを使用する場合、セキュリティ保護などが十分ではないゆえに情報漏洩などのリスクが高まる可能性がありますが、UEM製品を使用することで、管理を一元化し、従業員のデバイスを安全に業務に使用することができます。

企業が従業員にデバイスを提供する場合、財務的な負担が増えるかもしれません。しかし、UEMの導入により、BYODのハードルを下げ、企業の財務的負担を軽減することができます。

関連記事:
BYODとは?デメリット・メリットと導入時に考慮すべき点を解説! | 社内ポータル・SNSのTUNAG

2.コスト削減

UEMの一つの利点は、BYODの管理が容易になることです。BYODは「Bring Your Own Device」の略称で、「自分の端末を持ち運ぶ」と直訳されます。具体的には、個人が所有しているPC、タブレット、スマートフォンといった端末を職場に持ち込み、業務に利活用することを意味します。

従業員が自身のデバイスを使用する場合、セキュリティ保護などが十分ではないゆえに情報漏洩などのリスクが高まる可能性がありますが、UEM製品を使用することで、管理を一元化し、従業員のデバイスを安全に業務に使用することができます。

企業が従業員にデバイスを提供する場合、財務的な負担が増えるかもしれません。しかし、UEMの導入により、BYODのハードルを下げ、企業の財務的負担を軽減することができます。

3.セキュリティ性の向上

UEMには、セキュリティ向上を期待することも可能です。UEMは、デバイスやOS、使用しているアプリケーションに関係なく、業務に関わる情報を一元的に管理できます。BYODの環境でも、アプリケーションへのアクセス制限や社内ルールの自動適用などが可能です。

また、クラウドやネットワーク内の情報も管理し、バックアップを取ることで、万が一に備えることができます。これにより、より堅牢なセキュリティ体制を確立することができます。

4.生産性の向上

UEMにより、企業全体の生産性向上を期待することができます。UEMは、デバイスやOSに依存せずに管理することができます。このため、従業員がオフィスにいなくても、デバイスの管理が可能になり、テレワークやリモートワークの導入や切り替えが容易になります。

従業員が業務を効率的に行える環境が整うことで、企業の生産性向上につながる好循環が期待できます。

UEMを導入する際の注意点

古いデバイスには対応していない場合がある

古い社用のスマートフォンやPCなどのデバイスでは、UEMが利用できない場合があります。 特にPCの場合、Windows 7やWindows Vistaなどは対応していないことが多いため、UEMを導入する際は、まず社内で使用している社用スマートフォンやPCがUEMに対応していることを事前に確認し、その上で導入を進めることが重要です。

効率化できないケースもある

UEMツールを導入しても、状況によっては効率化できない場合があります。例えば、IoTの導入にはコストがかかり、担当者がどれだけデバイス管理に時間を費やすことができるのか、費用対効果が合っているのかなどを慎重に検討する必要があります。

UEMの5つの機能

UEMは、様々な機能を提供していますが、ここでは主要な5つの機能について説明します。

1. セキュリティ・プライバシー機能

重要な資産を保護するためには、セキュリティやプライバシーが保護されているデータやアプリケーションの利用が不可欠です。UEM製品には、安全なVPN接続をサポートしているものやデータとコンテナの暗号化に依存しているものがあります。また、特定のソフトウェアプラットフォームには、アプリケーションのコンテナ化を行う機能も含まれており、ユーザーと企業のデータやアプリケーションを分離して管理することが可能です。

さらに、多くのUEMのツールには、サイバー攻撃などの監視と攻撃による被害を軽減する機能が備わっており、セキュリティ侵害やマルウェアの監視を継続的に行い、影響を受けたシステムの修復に必要な手順を説明してくれます。

2. マルチデバイス対応

UEMが様々なデバイスやOSにサポートしていることが望ましいです。企業が保持するコンピュータ、モバイルデバイス、IoTデバイス、その他の接続されたハードウェアを一元的に管理するためには、それらを一元的にセキュリティ性を担保することができる共通プラットフォームが必要です。

マルチデバイスのサポートにより、管理ソリューションは従業員が持ち込んだ様々な種類のデバイスをスムーズに検出して識別することができるようになります。

3. IDとアクセスの管理

UEMを使うと、有効なアカウントやセキュリティポリシー(マルチレベル暗号化やカスタムパスワード要件など)に基づいて、ユーザーとデバイスのアクセスを制御することができます。様々なデバイスに対して一貫性のあるセキュリティポリシーに基づいた管理が可能になるため、管理者の工数削減につながるでしょう。

さらに、パスワードなしの認証機能を使うことで、ユーザーは一度だけ認証を行い、その後は他の認証要素(ユーザーの情報やデバイス、場所など)に移行するまで再度認証する必要がなく、ユーザーに大きな負担をかけることなくデバイスを利用することができるでしょう。

4. デバイスやアプリケーションのライフサイクル管理

様々なデバイスやBYOD環境をサポートする企業では、全体のセキュリティを確保するためにデバイスライフサイクル管理が重要です。UEMツールを使うことで、IT部門は1か所からデバイスの登録、設定、リモート管理、廃止などを行うことができます。

アプリケーションの管理機能を使うと、対象のデバイスにアプリケーションを展開、更新、追跡、削除することができます。一部のUEMツールは、Office 365等の企業が利用するアプリの設定や操作もサポートしています。

企業の機密データをオンラインで共有すると、スパムボットやハッカーなどの悪意のある存在から攻撃を受ける恐れがあります。それに対してUEMは、強固な認証メカニズムを通じて安全なデータ転送を保証します。また、データの損失を防止するためのポリシーとして、コピー&ペーストの制限や管理されたオープンインとファイル転送の禁止などを設定することも可能です。

5. アプリケーションのアップデート情報の通知

企業が使用するPCや様々なデバイスでは、多くのシステムやアプリケーションが動作していますが、技術の進歩などにより脆弱性が発見されることが度々あります。OSやアプリケーションを提供する会社は、脆弱性が発見されるたびに修正パッチやアップデート情報をユーザーに提供していますが、会社内の全てのアプリケーションのアップデートを図るとなると、多くの工数がかかります。またBYOD環境下では、全従業員が漏れなくアプリケーションのアップデートを実施することは難しいです。

しかし、脆弱性を放置した状態にし続けると、サイバー攻撃の影響を受けた際の被害が大きくなる恐れがあるため、迅速に対処することが重要になるでしょう。

UEMでは、エンドポイントでソフトウェア・OS、アプリケーションなどの脆弱性をスキャンし、必要に応じてパッチを自動的にプッシュ通知する機能が備わっていることがあり、これにより情報システムの工数を削減しつつ、脆弱性へ対応することが可能です。

おすすめUEMの製品(プラットフォーム)5選

ここでは、おすすめのUEM製品(プラットフォーム)を5つご紹介します。

1.VMWare Workspace ONE

VMware Workspace ONEは、VMware社が提供するUEMツールです。このプラットフォーム製品は、ユーザーごとに仮想的な作業環境(デジタルワークスペース)を提供し、あらゆるアプリケーションをシンプルかつセキュアに提供・管理できます。デバイスを問わず、統合されたデジタルワークスペースが、多様化するデバイス、普及が進むクラウドアプリ、煩雑化するID 管理などに伴うさまざまな課題を一挙に解決します。

VMware Workspace ONEには、デバイス管理、アクセス管理、アプリケーション管理などの機能が含まれています。これらの機能を一元的に管理することで、従業員の働き方にあわせて迅速かつ柔軟に対応して生産性を向上させながら、セキュリティの向上とIT管理者の負担を大幅に低減することができます。

参考:VMWare Workspace ONE 公式HP

2.Ivanti Neurons for MDM (旧名:Mobileiron UEM)

Ivanti Neurons for MDM(旧名:MobileIron UEM)は、Ivanti社が提供するUEMツールです。

モバイルデバイスだけでなく、WindowsやmacOSまで一元管理できるツールです。現在、テレワークや複数デバイスを併用するスタイルが広まる中、デバイス管理はますます複雑になっています。

Ivanti Neurons for MDMでは、一貫したセキュリティポリシーをデバイスに展開し、会社支給デバイスのみならずBYODも含め、これらの課題を解決します。リモートワークの増加に伴い、より一層必要性が高まっているUEMツールです。

参考:Ivanti Neurons for MDM 公式HP

3.LANDSCOPE

LANDSCOPEは、エムオーテックス株式会社(MOTEX Inc.)が提供するUEMツールです。

10,000社以上の企業に導入され、PC管理はもちろん、iOSやAndroidのスマホ・タブレットも管理することができます。クラウド上のサービスのため運用も簡単で、金額も300円〜とお手軽です。また、AIウイルス、Microsoft、ヘルプデスクといった用途によって特化したサービスも展開しているのでクリティカルな対処が可能です。

参考:PC・スマホをクラウドで一元管理 LANDSCOPE公式HP

4.MobileIron

MobileIronは、サイバネットシステム株式会社が提供するUEMツールです。日本国内で初めてUEMの普及をしたことで認識されています。「box」「onelogin」といったビジネスツールと相性が良いことが特徴としてあげられます。

参考:MobileIron 公式HP

5.SKYSEA Client View

SKYSEA Client Viewは、SKY株式会社が提供するUEMツールです。オプション機能「SKYSEA Client View for MDM」を組み合わせることでUEMとしての効果を発揮します。メニュー画面には機能が一目で分かる大きなアイコンを配しており、UX・UIの評価が高いです。また、時代の潮流により変化するIT課題を解決するため、毎年定期的なバージョンアップを重ねています。その企業努力もあって、22,502ユーザーを超えて導入実績があります。

参考:SKYSEA Client View 公式HP

UEMの変遷

UEMはこれまで、時代とともに以下のように変化してきました。

リモートデバイスの管理のためのデバイス管理ツール

モバイルデバイスが普及した当時、企業は従来のデバイス管理ツールに満足していました。当初は主にリモートデバイスの管理に焦点が当てられており、デバイスのプロビジョニングから位置追跡までの活動を基本的なレベルで処理できました。効率性やセキュリティはそれほど注目されるキーワードではなく、MDMの機能としては、リモートワイプやデータの暗号化などの基本的なセキュリティを提供するだけで十分とされていました。

モバイルデバイスの利用急増

最初の転機は、スマートフォンなどといったモバイルデバイスの利用の急増とともに訪れました。初期のモバイルデバイスやモバイルアプリが市場に登場したとき、デバイス管理ソリューションへのニーズが顕著になりました。

従業員が個人のモバイル端末から企業データにアクセスするようになると、企業はBYOD(自分のデバイスを持ち込む)のセキュリティを優先し、無保護の外部デバイスがサイバー攻撃の原因温床になるのを防ぐ必要がありました。

これがMAM(モバイルアプリケーション管理)やMCM(モバイルコンテンツ管理)の始まりであり、モバイルデバイス管理の機能を拡張してアプリとアプリデータの管理と保護に焦点を当てました。

リモートワークの普及

次の転機は、リモートワークの形で現れました。新型コロナウイルスの流行により、多くの企業がリモートワークに移行し、オフィスの範囲外でPCやモバイルデバイスを利用するようになりました。IT環境を簡単に監視管理するためには、一元的な管理画面を提供する解決策が必要でした。

これにより、オフィス範囲外での多様なデバイスを管理できるUEMの重要性が高まり、UEM製品が企業で使用されるようになりました。

まとめ

今回は、UEM(統合エンドポイント管理)について解説してきました。UEMは、タブレットやPCなどのエンドポイントデバイスを一元管理するツールであり、デバイスのロックやパスワードの設定、アプリケーションの管理などに役立ちます。また、UEMはMDMやEMMとの違いも解説されており、全てのエンドポイントを一元管理することができる点が強みです。

これによって、従業員の働き方にあわせて迅速かつ柔軟に対応して生産性を向上させながら、セキュリティの向上とIT管理者の負担を大幅に低減することにつなげてみてはいかがでしょうか。

低コストでセキュリティ対策を始めるなら

  • 「セキュリティ対策が求められているが、予算が限られている」
  • 「ひとり情シス状態で、管理負担が大きい」

こうしたお悩みを抱える中小企業の方は多くいらっしゃいます。

予算やリソースが限られている企業では、市販のパッケージソフトが高額で、オーバースペックになりがちです。

弊社の「漏洩チェッカー」は、PC端末の台数や必要な機能に応じて契約内容を調整できるため、コストを抑えながら最適なセキュリティ対策を実現します。

ITの専門知識がなくても簡単に操作できるシンプルな管理画面を備えており、運用負担が少ない点も「漏洩チェッカー」の特徴です。

まずは無料で資料をダウンロードしてお確かめください。

漏洩チェッカー:https://stmn.co.jp/roei-checker/
運営会社:株式会社スタメン(東証グロース市場4019)

著者情報

漏洩チェッカー 編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

漏洩チェッカーは、株式会社スタメンが運営する、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)およびプライバシーマーク(Pマーク)を取得しているクラウドサービスです。東京証券取引所グロース市場上場。