IT資産管理ツールの導入動向

まずは、IT資産管理ツールの導入動向とその要因について考察してみます。アイティメディア株式会社の運営するIT製品情報サイト「キーマンズネット」の2022年の調査(※)によると、調査対象企業(263社)のうち、50.2%の企業がIT資産管理ツールを導入済でした。前年2021年の調査においては、59.9%(調査対象224社)の企業が導入済みであり、2年連続で50%を超える調査結果となりました。

ツールの利用形態別で見ると、パッケージソフトの利用が46.8%、SaaS(Software as a Service、クラウドサービス)の利用が21.4%でした。前回調査との比較ではパッケージソフトで5.1ポイント減少する代わりに、SaaS利用が3.2ポイント増加していることがわかりました。

それでは、IT資産管理ツールの導入が進んでいる要因とは何なのか、さらにその中でもSaaSやクラウドサービスの利用が増えている要因について考察しました。

①IT資産管理ツールの導入が進んでいる理由
コロナ禍を背景に、社員の勤務形態が多様化(出社のみの形態から、テレワーク化、あるいは出社とテレワークの併用など)したため、テレワーク用PCやスマホなどの管理対象アイテムが増加したことが考えられます。

②SaaSやクラウドサービスの利用が増加した理由
テレワーク用PCやテレワーク時のスマホなどは社外での利用が前提となるため、社外ネットワーク経由でのウィルスチェックソフトのパターンファイル更新や、セキュリティパッチの適用等を行う必要があります。広域でのIT資産管理には社内のオンプレミス環境でのパッケージソフト導入によるものよりも、クラウドサービスを利用するほうが様々な点でメリットがあるためと考えられます。

以上の点を考えると、今後はIT資産管理ツールの導入は今後も進み、特にクラウドサービスでの利用が増加するのではと推測できます。

▼参考
IT資産管理ツールの導入状況(2022年)/前編 - キーマンズネット
IT資産管理ツールの導入状況(2022年)/後編 - キーマンズネット

IT資産管理における3つの課題

次にIT資産管理を行う上での課題について考えてみましょう。課題についてはIT資産管理に関するするリスクを考えながら説明します。

▼参考
IT資産管理に潜むリスクと課題ー今、企業に求められるIT資産管理の高度化ー | 野村総合研究所
What are the Challenges for IT Asset Management? | Loggle

1. 適正なソフトウェアライセンスの管理

適正なIT資産の管理を行えていないと、そのIT資産であるハードウェアで使用されているソフトウェアライセンスの適正な管理も行えず、必要な対価の支払いが行われないためにベンダー側から訴えられるリスクがあります。企業にとっての訴訟リスクを考えると、適正なIT資産の管理、特にライセンスの管理は企業の経営面にとっても重要な課題であるということができます。

2. IT資産のライフサイクル管理

IT資産には、契約、導入、利用、維持、廃棄といったライフサイクルが存在します。そのIT資産のライフサイクルの各局面に応じた管理、さらにはライフサイクルを通した管理が不十分だと、例えば契約内容とIT資産の実物との紐付けができず、IT資産の廃棄をする際にその資産がどの契約によっていつ導入されて何年使用したかの把握ができません。

またIT資産の契約内容を確認できないまま資産を廃棄してしまうと、実物のないIT資産に対していつまでも保守費用を支払い続けるといった無駄な行為を続けてしまうことにもなります。事態の回避のためにはIT資産管理ツールによるIT資産のライフサイクルを通じた管理を実現することが必要となります。

参考:PC-LCMとは?外注、社内対応を検討するポイント | 漏洩チェッカー

3. IT資産の適切な構成管理

IT資産の管理には、各IT資産においてどのOSやソフトウェアが稼働しているのか、さらにはそのOSやソフトウェアのバージョン、ソフトウェアのライセンス番号の管理も必要です。この管理ができていないと、例えば最新のセキュリティパッチが適用されていないPCをそのまま放置してしまう結果、外部からの不正アクセスの標的にされたり、旧バージョンのソフトウェアが稼働しているPCを利用して業務トラブルを発生せたりするリスクを内包することになります。

IT資産管理ツールを導入するにあたっては、このような課題を認識した上で、課題解決ができる製品を選択する必要があります。

IT資産管理ツール比較10選

それでは、次に実際のIT資産管理ツールの内容を確認してみましょう。提供形態・価格・無料トライアルの有無・主要機能・運営会社の5つの観点から、各社の製品を紹介します。

サービス名提供形態価格無料トライア運営会社
漏洩チェッカークラウド月額100円/1ライセンス〜有(7日間)株式会社スタメン
IT Policy N@viクラウド月額450円/1ライセンス〜
※最少契約数は20ライセンス
有(1ヶ月間)富士通株式会社
SPPMクラウドセキュリティパック:1,100円/台(PC1台+スマホ1台)※税込有(30日間)株式会社AXSEED
ジョーシスクラウド別途お問合せが必要有(14日間)ジョーシス株式会社
e-Survey+オンプレミスライセンス参考価格 1,500,000円(対象500台)株式会社ニッポンダイナミックシステムズ
LANSCOPE エンドポイントマネージャークラウド・オンプレミス■クラウド版
月額300円/1台〜
■オンプレミス版
4,500円/1台〜
有(60日間)エムオーテックス株式会社
System Support best1(SS1)クラウド・オンプレミス5,000円/1ライセンス〜
※別途サーバ等の導入費用が必要
株式会社ディー・オー・エス
Senju/SMクラウド・オンプレミス■Saas版ベースサービス版:
150,000円/月
■パッケージ版:
3,800,000円/個
株式会社野村総合研究所
SKYSEA Client Viewクラウド・オンプレミス■Light Edition サーバーライセンス: 280,000円
Light Edition クライアントライセンス(100台):

710,000円
有(90日間)Sky株式会社
MCoreクラウド・オンプレミス別途お問合せが必要住友電工情報システム株式会社
※表は、各サービスのHPの情報をもとに、当社が独自に作成

1. 漏洩チェッカー

PC1台月額100円から手軽に始められ、1機能単位で契約ができ、自社に合った契約プランで利用できるIT資産管理ツールです。ソフトウェア管理・ハードウェア管理に必要な一連の機能を揃えているうえ、PCのスクリーン監視やUSBドライブ監視等、各種監視機能も装備されており高い機能性を発揮します。

■提供形態
クラウド

■価格(形態)
1台100円から

■無料トライアル有無
有(14日間)

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・契約管理

■運営会社
株式会社スタメン

サービスサイト:https://stmn.co.jp/roei-checker/

2. IT Policy N@vi

管理対象端末で稼働するエージェントが定期的にインベントリをセンターへ送信、管理者は収集されたインベントリ情報を管理者用画面で確認できます。管理者指示により、「利用者氏名」「機器の状況」「機器設置場所」などをオンラインで棚卸回答可能で、棚卸終了期限が近づいた際の通知機能も活用できます。セキュリティ診断(更新プログラム適用・ウィルス対策ソフト更新・ソフトウェア版数診断、禁止ソフトウェア診断など)や端末の操作利用制限も可能です。

■提供形態
クラウド

■価格(形態)
1ライセンスあたり月額450円(税抜)(最少契約数は20ライセンスから)
※ライセンス数は端末数

■無料トライアル有無
有(1ヶ月間)

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・端末へのファイルやソフトウェアの配付
・セキュリティチェック
・操作利用制限

■運営会社
富士通株式会社

サービスサイト:https://www.fujitsu.com/jp/solutions/enterprise-solutions/business-applications/itpolinavi/

3. SPPM

SPPMは業務用スマートフォンだけでなく、業務用PCの管理にも焦点をあて、管理機能を充実しています。PCとモバイル端末の管理に必要な機能がそろった「セキュリティパック」では、AI技術を検知システムに採用しているアンチウイルスソフトもパッケージされているため、これ一つで必要な対策をすぐに実施することができます。スマートフォン(Android or iOS)1台+PC(Windows or Mac)1台の月額管理費用と必要な機能がセットになったお得なパックです。

■提供形態
クラウド

■価格(形態)
セキュリティパック:1,100円/台(PC1台+スマホ1台)※税込

■無料トライアル有無
有(30日間)

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集

■運営会社
株式会社AXSEED

サービスサイト:https://www.sppm.jp/

4. ジョーシス

デバイスやSaaSの利用状況・利用料金をまとめて、従業員データと紐づいた形で一元管理をすることができるサービスで、不要なアカウントの棚卸しや、無駄なITコストも把握することが可能です。また、アカウントの管理やデバイスの購入から手間のかかるキッティング・廃棄まで、情報資産のライフサイクルも効率化することができます。IT資産管理だけでなくサービス管理もできるツールです。

■提供形態
クラウド

■価格(形態)
別途お問合せが必要(管理対象のユーザー数に応じて課金)

■無料トライアル有無
有(14日間)

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・セキュリティチェック
・アカウント管理

■運営会社
ジョーシス株式会社

サービスサイト:https://jp.josys.com/

5. e-Survey+

クライアントPCへのエージェント導入が不要なため、他のアプリケーションとの競合やパフォーマンス低下の心配がありません。また、安価なライセンス体系に加え、有償版のデータベースを用意する必要がないので、低コストで導入が可能です。

■提供形態
オンプレミス

■価格(形態)
ライセンス参考価格 1,500,000円(対象500台、税抜)

■無料トライアル有無

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・アラート機能
・契約管理

■運営会社
株式会社ニッポンダイナミックシステムズ

サービスサイト:https://www.nds-tyo.co.jp/e-survey/

6. LANSCOPE エンドポイントマネージャー

PC等のIT資産管理に加え、スマホの一元管理に関するノウハウを高めてきた管理ツールで、PC・スマホの一元管理を得意とするIT資産管理ツールです。操作ログ取得や位置情報取得などのIT資産管理機能に加えて、リモートロックやセキュリティなどのMDM機能を備えており、Apple Business ManagerやAndroid Enterpriseに対応しています。

■提供形態
クラウド・オンプレミス

■価格(形態)
・クラウド版
1台あたり月額300円から
・オンプレミス版
1台あたり4,500円から

■無料トライアル有無
有(60日間)

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・端末へのファイルやソフトウェアの配付
・セキュリティチェック
・操作利用制限
・位置情報取得

■運営会社
エムオーテックス株式会社

クラウド版サービスサイト:https://www.lanscope.jp/an/
オンプレミス版サービスサイト:https://www.lanscope.jp/cat/

7. System Support best1(SS1)

IT資産管理に特化した基本機能をベースに、豊富なオプション機能を選択・追加できる製品設計になっているIT資産管理ツールです。Windows更新管理やログ管理、リモートコントロールなど様々な機能を搭載しています。他社にはないMicrosoft 365/Teamsのセキュアな運用を支援する機能も搭載していることが特徴です。

■提供形態
クラウド・オンプレミス

■価格(形態)
・基本機能は1ライセンスあたり5,000円(税抜)から
・オプション機能利用の場合は別途費用が必要
※別途サーバ等の導入費用が必要

■無料トライアル有無

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・契約管理
・端末へのファイルやソフトウェアの配付
・セキュリティチェック
・操作利用制限
・Microsoft365管理

■運営会社
株式会社ディー・オー・エス

サービスサイト:http://www.dos-osaka.co.jp/ss1/

8. Senju/SM

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)に基づく運用を実現する上で、効果が見えやすいサービスデスクを簡単に構築することができるIT資産管理ツールです。サービスデスクにとって必須のインシデント管理をはじめ、それを強力にサポートする「サービス要求」「問題管理」「変更管理」「構成管理」「ナレッジ」「サービスレベル」を統合。また運用の現場の意見を踏まえ、インシデント管理など、日本特有の精緻な運用にも柔軟に対応しています。

■提供形態
クラウド・オンプレミス

■価格(形態)
・SaaS版ベースサービス版
150,000円/月
・パッケージ版
3,800,000円/個

■無料トライアル有無

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・端末へのファイルやソフトウェアの配付
・セキュリティチェック
・インシデント管理
・ナレッジ管理

■運営会社
株式会社野村総合研究所

サービスサイト:https://senjufamily.nri.co.jp/ssm/

9. SKYSEA Client View

資産管理やセキュリティ管理、ログ管理等の機能を搭載した「使いやすさ」をコンセプトとする運用管理ツールです。テレワークでの運用支援機能やサイバー攻撃等に対する多層防御機能を搭載し、他社各製品との連携で各種対策を強化する機能も提供しています。

■提供形態
オンプレミス・クラウド・SaaS

■価格(形態)
・Light Edition サーバーライセンス価格:280,000円
・Light Edition クライアントライセンス価格(100台):710,000円
※上記はサンプル価格です。

■無料トライアル有無
有(90日間)

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・端末へのファイルやソフトウェアの配付
・セキュリティチェック
・操作利用制限
・アラート機能
・Microsoft365管理

■運営会社
Sky株式会社

サービスサイト:https://www.skyseaclientview.net/

10. MCore

資産管理からセキュリティ対策、検疫までを1システムで行える統合管理ツールで、ユーザーのニーズに応じて段階的な導入が可能であり、IT資産の把握、監視、統制による健全なシステム環境を実現します。対象規模としては従業員規模500人以上の大規模システムに対応します。

■提供形態
クラウド・オンプレミス

■価格(形態)
別途お問合せが必要

■無料トライアル有無

■IT資産管理における主要機能(どの項目・指標を管理できるのか)
・ハードウェア・ソフトウェアのインベントリ収集
・ソフトウェアライセンス管理
・オンライン棚卸
・端末へのファイルやソフトウェアの配付
・セキュリティチェック
・操作利用制限
・契約管理
・アラート機能

■運営会社
住友電工情報システム株式会社

サービスサイト:https://www.sei-info.co.jp/mcore/

IT資産管理ツールの比較ポイント3選

次に実際にIT資産管理ツールを選定するにあたっての比較ポイントについて説明しましょう。

1. 自社の管理に必要な機能が揃っているか

自社のIT資産管理に必要な機能が揃っているかを前提に各社のツールを確認するようにしましょう。同じIT資産管理ツールとして基本機能(ハードウェアやソフトウェアの管理や棚卸機能など)はあっても、契約管理ができるものとできないものがあったり、導入から廃棄までのライフサイクル管理ができるものとできないものがあったりと製品によっては違いがあります。その点で自社で必要とする機能を充足しているものかどうかを確認することが重要です。

2. 自社のセキュリティポリシーに適合するか

自社のセキュリティポリシーで、使用を認めたソフトウェア以外の使用を禁止したり、USB等の外部接続機器の使用を制限したりする場合があります。そういった管理を必要とする場合は、それに対応した機能が実装された製品を選定するようにしましょう。

3. 管理対象とする機器の範囲はマッチするか

IT資産管理ツールには、その管理可能とする範囲に違いのあるものもあります。例えばスマホの管理を得意とするものはAndroidとiosの両方に対応可能なものがあっても、他の製品ではそこまでを考慮した対応ができなかったり、PCにしてもWindowsとMacの双方を考慮した対応ができるものとできないものがあります。

自社で管理を必要とする機器の範囲や管理レベルをよく把握した上で製品選定をするようにしましょう。

まとめ

当記事では、各社から販売されているIT資産管理ツールの特徴の比較を中心に述べてきました。IT資産管理ツールとして求められる基本機能に、各社の得意な機能を追加して提供するというものが多いと感じられますが、重要なのは自社でどのような機能を必要とするかを明らかにした上で製品選定をすることだと考えます。

この記事が、最適なIT資産管理ツール選定の参考になれば幸いです。

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