サイバー攻撃の脅威が日々増大する中、DDoS攻撃は企業にとって深刻な問題となっています。本記事では、DDoS攻撃の仕組みから具体的な対策方法まで、企業のセキュリティ担当者や経営者の方々に向けて、わかりやすく解説します。DDoS攻撃から自社を守るための第一歩として、ぜひご活用ください。

DDoS攻撃とは何か

DDoS攻撃は、企業のウェブサイトやサービスを狙う悪質なサイバー攻撃の一種です。その特徴と影響について、詳しく見ていきましょう。

サーバーに大量のデータを送りつけるサイバー攻撃

DDoS攻撃(Distributed Denial of Service attack)は、複数の攻撃元から標的となるサーバーやネットワークに大量のデータを送りつけ、システムを機能不全に陥らせる攻撃手法です。

正常なアクセスと異常なアクセスの区別が難しく、対処に時間がかかるという特長があります。

攻撃者は、ボットネットと呼ばれる感染端末の集合を利用して、一斉に大量のリクエストを送信します。その結果、サーバーの処理能力やネットワークの帯域幅を超える負荷がかかり、正常なユーザーがサービスを利用できなくなってしまいます。

DDoS攻撃の種類

DDoS攻撃には、様々な種類があります。主なものとして以下の3つが挙げられます。

①ボリューム攻撃:大量のデータを送りつけ、ネットワーク帯域を埋め尽くす攻撃です。UDP フラッドやICMP フラッドなどがこれに該当します。

②プロトコル攻撃:TCP SYN フラッドなど、通信プロトコルの脆弱性を突く攻撃です。サーバのリソースを枯渇させることを目的としています。

③アプリケーション層攻撃:HTTP フラッドやSlow POST攻撃など、アプリケーションの脆弱性を狙った攻撃です。少ない通信量で大きな効果を狙うため、検知が難しいのが特徴です。

これらの攻撃は単独で行われることもあれば、複合的に使用されることもあります。攻撃の種類によって対策方法が異なるため、自社のシステムがどの攻撃に弱いかを把握しておくことが重要です。

DDoS攻撃の対策が難しい理由

DDoS攻撃への対策が難しい理由はいくつかあります。

まず、攻撃元が分散しているため、特定のIPアドレスをブロックするだけでは防ぎきれません。また、正常なトラフィックと攻撃トラフィックの区別が難しく、誤って正常なユーザーのアクセスを遮断してしまう可能性があります。

攻撃手法が日々進化しており、新たな対策を常に講じる必要があるのも厄介な点です。

さらにDDoS攻撃への対策が難しい理由として、監視が難しいことが挙げられるでしょう。DDoS攻撃は短時間で大規模な被害をもたらすため、検知から対応までの時間が極めて重要になります。しかし、多くの企業では24時間体制での監視が難しく、攻撃を即座に検知できないことも対策を困難にしている要因の一つです。

これらの理由から、DDoS攻撃への対策には、専門的な知識と継続的な取り組みが求められます。

DDoS攻撃ではどんな被害が出る?

DDoS攻撃は、企業に様々な形で深刻な影響を与えます。具体的にどのような被害が想定されるのか、詳しく見ていきましょう。

ウェブサイトの停止

DDoS攻撃の最も直接的な影響は、ウェブサイトやオンラインサービスの停止です。大量のトラフィックによってサーバーが過負荷状態になり、正常なユーザーからのアクセスに応答できなくなります。

これは、オンラインショップや予約システムなどを運営する企業にとって、即座に売上の減少につながる深刻な問題です。

例えば、1時間のダウンタイムが数百万円の損失を意味する場合もあります。さらに、長時間のサービス停止は、顧客の信頼を失うことにもつながり、長期的な事業への影響も懸念されます。特に、重要なイベントや商戦期に攻撃を受けた場合、その影響は計り知れません。

経済的損失や風評被害

DDoS攻撃による被害は、直接的な経済的損失にとどまりません。サービス停止中の売上損失に加え、システムの復旧にかかる費用、セキュリティ対策の強化費用など、攻撃後の対応にも多額のコストがかかります。

さらに深刻なのは、企業の評判や信頼性への影響です。

セキュリティ事故が報道されることで、顧客の信頼を失い、ブランドイメージが大きく損なわれる可能性があります。

こうした風評被害は、長期にわたって企業の成長を妨げる要因となりかねません。また、個人情報保護法違反などの法的リスクも生じる可能性があり、罰金や訴訟のリスクも考慮する必要があります。

ユーザーがサービスを利用できなくなる

DDoS攻撃の影響は、企業側だけでなく、サービスを利用するユーザーにも及びます。オンラインバンキング、電子商取引、クラウドサービスなど、日常生活やビジネスに欠かせないサービスが利用できなくなることで、ユーザーの日常生活やビジネス活動に大きな支障をきたします。

例えば、決済システムがダウンすれば、企業は売上を逃すだけでなく、顧客の信頼も失います。また、クラウドサービスが停止すれば、そのサービスに依存している多くの企業の業務が滞る可能性があります。

このように、DDoS攻撃の影響は、攻撃を受けた企業だけでなく、そのサービスを利用する多くのステークホルダーにまで波及するのです。

DDoS攻撃の具体的な被害事例

DDoS攻撃の脅威は決して他人事ではありません。実際に起きた具体的な被害事例を見ていくことで、その影響の深刻さを理解しましょう。

東京五輪組織委員会の被害事例

2015年、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のウェブサイトがDDoS攻撃を受け、一時的にアクセスしづらい状況となりました。

この攻撃は大会期間中に発生し、約12時間ほど、公式ページが閲覧できない状態になりました。幸い、大規模な情報流出や長時間のサービス停止には至りませんでしたが、世界的な注目を集めるイベントでのセキュリティ上の脆弱性を露呈することとなりました。

この事例は、イベント運営におけるサイバーセキュリティの重要性を再認識させるものとなりました。大規模なイベントや重要な時期には、通常以上の警戒と対策が必要であることを示しています。

DNSサービス業者へのDDoS攻撃事例

2016年、米国のDNSサービスプロバイダーDyn社が大規模なDDoS攻撃を受け、米国東海岸で多くの大手ウェブサービスが一時的に利用できなくなる事態が発生しました。この攻撃では、IoTデバイスを利用したボットネットが使用され、その規模は毎秒1.2テラビットに達したと言われています。

この事例は、DNSサービスという、インターネットの基盤となるサービスを狙った攻撃が、いかに広範囲に影響を及ぼすかを示しました。また、IoTデバイスのセキュリティの脆弱性が浮き彫りとなり、今後の対策の必要性を強く印象付けました。

米国のネットを麻痺させた「史上最大のDDoS攻撃」発生の裏側

マルウェアによる被害事例

2016年、「Mirai」と呼ばれるボットネットがDNSサービスプロバイダに対して猛威を振るい、何億人もの人がその被害を受けました。このマルウェアは、感染したIoT機器(カメラやプリンターなど)を遠隔操作してしまいます。

障害は1日で復旧しましたが、この事例は、マルウェアがDDoS攻撃の一部として利用される可能性を示すとともに、セキュリティ対策の重要性を改めて認識させるものとなりました。特に、重要インフラを担う組織のセキュリティ対策の緊急性が浮き彫りになりました。

DDoS攻撃の標的

DDoS攻撃は、特定の企業や組織を狙って行われます。なぜ攻撃者は特定の標的を選ぶのでしょうか。ここでは、DDoS攻撃の目的や狙われやすい企業の特徴について解説します。

攻撃者の目的

DDoS攻撃を仕掛ける攻撃者の動機は多岐にわたります。最も一般的なのは金銭的利益を得ることで、身代金要求や競合他社からの依頼などがこれに該当します。

また、特定の組織や政府機関を標的に政治的主張を表明するケースもあります。中には、自身の技術力を誇示するためにハッカー集団が攻撃を行うこともあります。さらに注意が必要なのは、DDoS攻撃を表面的な攻撃として利用し、裏で情報窃取などの別の侵入を行う戦略的な攻撃です。

企業はこれらの多様な動機を理解し、自社がどのような理由で狙われる可能性があるかを把握した上で、適切な対策を講じることが重要です。

狙われやすい企業・組織の特徴

DDoS攻撃の標的となりやすい企業や組織には、いくつかの共通点があります。

まず、eコマースやオンラインバンキングなど、オンラインサービスへの依存度が高い企業が挙げられます。

また、知名度の高い企業や組織は、攻撃の影響が大きく注目を集めやすいため、狙われやすい傾向にあります。金融機関や医療機関、政府機関など、機密情報や個人情報を多く扱う組織も格好の標的となるでしょう。

さらに、選挙期間中の政党や大規模セールを控えた小売業など、重要なイベントや時期を控えている組織も要注意です。

一方で、セキュリティ対策が不十分な中小企業は、大企業や政府への攻撃の踏み台として狙われる可能性があります。

自社の脆弱性を確認する方法

自社のシステムがDDoS攻撃にどの程度耐えられるか、事前に把握しておくことが重要です。

脆弱性を確認する方法としては、まず専門の診断ツールや外部の専門家を利用した脆弱性診断があります。また、実際の攻撃を模擬するペネトレーションテストも有効です。

過去のアクセスログを分析して異常なトラフィックパターンを確認したり、リアルタイムでネットワークトラフィックを監視したりすることも効果的でしょう。

さらに、現在のセキュリティポリシーが適切かどうか、定期的に見直すことも忘れてはいけません。これらの方法で、自社システムの脆弱性を多角的に把握し、必要な対策を講じることができます。

DDoS攻撃の対策方法

DDoS攻撃から企業を守るためには、複数の対策を組み合わせる必要があります。ここでは、効果的な対策方法について解説します。

サーバー設定の見直し

DDoS攻撃への耐性を高めるには、サーバーの設定を適切に行うことが重要です。まず、ファイアウォールの設定を見直し、不要なポートを閉じてアクセス制限を適切に設定します。

また、接続のタイムアウト時間を短く設定してリソースの浪費を防いだり、同時接続数に上限を設けて過度の負荷を防いだりすることも効果的です。

静的コンテンツをキャッシュすることでサーバーの負荷を軽減したり、一定時間内のリクエスト数を制限して急激なトラフィック増加を防いだりするのも有効な対策となります。

これらの設定を適切に行うことで、DDoS攻撃の影響を軽減し、サーバーの安定性を向上させることができます。ただし、正常なユーザーのアクセスに影響を与える可能性もあるため、慎重な調整が必要です。

セキュリティソフトの導入

DDoS攻撃を検知し、防御するためのセキュリティソフトやサービスを導入することは、有効な対策の一つです。

Webアプリケーションレベルでの攻撃を検知・防御するWAF(Web Application Firewall)や、ネットワークレベルでの不正アクセスを検知・遮断するIPS(Intrusion Prevention System)などが代表的です。

また、クラウドベースで大規模なDDoS攻撃を緩和するDDoS緩和サービスや、異常なトラフィックパターンをリアルタイムで検知するトラフィック分析ツール、ボットネットからの攻撃を特定し遮断するボットネット対策ソフトなども活用できます。

これらのツールやサービスを組み合わせることで、多層的な防御体制を構築できます。ただし、導入にはコストがかかるため、自社のリスク評価に基づいて適切なものを選択することが重要です。

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情報セキュリティポリシーの策定

情報セキュリティポリシーの策定は、DDoS攻撃対策の要となります。

情報セキュリティポリシーとは、組織全体でセキュリティに対する共通認識を持ち、一貫した対応を可能にするためのルールのことです。

DDoS攻撃は複雑で急速に進化するため、明確な指針がなければ効果的な対策は困難です。ポリシーにより、リスク評価の基準や対応手順が明確になり、迅速かつ適切な行動がとれます。

また、従業員の役割や責任を明確にすることで、組織全体のセキュリティ意識が向上し、人的ミスによる脆弱性を減らすことができます。定期的な見直しにより、最新の脅威に対応し続けることが可能になります。

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セキュリティ対策で万が一のリスクを減らす

DDoS攻撃への対策は、一度実施して終わりではありません。技術の進歩や攻撃手法の変化に応じて、継続的に対策を見直し、改善していく必要があります。

DDoS攻撃は企業にとって大きな脅威ですが、適切な対策を講じることで、そのリスクを大幅に軽減することができます。

本記事で紹介した対策を参考に、自社のセキュリティ体制を見直し、強化していただければ幸いです。サイバーセキュリティは終わりのない戦いですが、継続的な取り組みが企業の安全と成長を支える重要な基盤となるのです。

関連記事:サイバー攻撃の脅威とは?攻撃の種類や企業が取るべき対策を徹底解説

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漏洩チェッカー 編集部

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