マルウェアの種類や感染経路は多様化し、企業に対する被害も甚大になっています。本記事では、マルウェアの基本的な概念から最新の脅威、そして効果的な対策まで、企業を守るために必要な情報を分かりやすく解説します。適切な対策で、大切な情報資産を守りましょう。

マルウェアって何?ウイルスと何が違う?

マルウェアは企業のデジタル資産を脅かす深刻な脅威です。その仕組みと危険性を正しく理解することが、効果的な対策の第一歩となります。まずは、マルウェアの基本的な概念から、ウイルスとの違いまでを解説します。

マルウェアとは悪意のあるソフトウェアやコードの総称

マルウェア(Malware)は、「悪意のあるソフトウェア(Malicious Software)」からつくられた造語で、コンピューターシステムに危害を加えることを目的とした悪意のあるソフトウェアの総称です。

かつては「コンピューターウイルス」や「ワーム」という呼称が一般的でしたが、現在ではより広範な脅威を包括する「マルウェア」という用語が普及しています。

マルウェアには、ボット・ランサムウェア・スパイウェア・トロイの木馬など、さまざまな種類があり、これらは利用者の気づかないうちに活動し、多くの場合深刻な被害をもたらします。

その目的は個人情報の窃取やシステムの破壊、リソースの不正利用など多岐にわたり、特に企業にとっては機密情報の漏洩や業務妨害などをもたらす重大な脅威です。

マルウェアはUSBメモリや電子メール、ウェブサイト閲覧などさまざまな経路で侵入し、システムを破壊したり、他のコンピュータに感染を広げたり、バックドアを作成したりします。

マルウェアとウイルスの違い

マルウェアは、先述の通り悪意のあるソフトウェア全般を指す包括的な用語です。一方、ウイルスはマルウェアの一種であり、特定の特徴を持つものを指します。

かつては、コンピュータに侵入して害をなすプログラムをまとめてウイルス(広義のウイルス)と呼ぶこともありましたが、近年はマルウェアと呼ばれるのが一般的です。

簡単に言えば、ウイルスはマルウェアの種類の一つということです。混同されることもある両者の呼び方ですが、IT分野においてはマルウェアとウイルスは明確に区別されています。

マルウェアの種類

マルウェアは日々進化し、その種類も多様化しています。効果的な対策を講じるためには、それぞれの特徴と脅威を理解することが不可欠です。ここでは、代表的なマルウェアの種類とその特徴を解説します。

ウイルス

先にも紹介したウイルスは、マルウェアの中でも最も古くから知られている種類の一つです。

主な特徴として、自己複製による感染拡大機能、特定の条件下で発症する潜伏機能、そしてデータ破壊や異常動作を引き起こす発病機能が挙げられます。

ウイルスは他のプログラムやファイルに寄生し、自己を複製して拡散するという特性を持ち、人間の体内でインフルエンザウイルスが増殖するのと同様に、コンピューター内で増殖します。しかし、宿主となるプログラムがなければ感染は広がらないという点も重要です。

ウイルスの被害は多岐にわたり、ファイルの破壊やシステムの不安定化、個人情報の窃取など、企業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、新種のウイルスは従来の対策ソフトでは検出が困難な場合があり、常に警戒が必要です。

感染経路も時代とともに変化しており、かつてはフロッピーディスクなどの物理的媒体を介した感染が主流でしたが、現在では電子メールの添付ファイルやウェブサイトの閲覧を通じた感染が主要な経路となっています。

このような変化は、インターネットの普及とデジタル技術の発展に伴うものであり、ウイルス対策もこれらの変化に応じて進化し続ける必要があります。

ワーム

ワームは、ウイルスと同様に自己複製能力を持つマルウェアですが、その特性と脅威の性質が大きく異なります。

ウイルスが他のファイルに寄生するのに対し、ワームは独立したプログラムとして存在し、ネットワークを通じて自身のコピーを送信することで急速に拡散します。

「ネットワーク上を這い回る虫」という意味合いから「ワーム(worm:虫)」と呼ばれるようになりました。

ワームの主な脅威は、その驚異的な拡散能力にあります。短時間で大規模なネットワークに感染し、企業の業務システムをまひさせる可能性があり、過去にはパンデミック(大規模感染)を引き起こした例も少なくありません。

感染したコンピューター内でIPアドレスをランダム生成して感染先を広げたり、アドレス帳を探索して自己の複製を添付したメールを一斉送信したり、さらには保存されたパスワードを盗用してSNSに不正アクセスし、感染源となるリンクを投稿するなど、自ら積極的に被害を拡大させていく点が非常に危険です。

また、ワームはバックドアを作成し、攻撃者にシステムへの不正アクセスを許す場合もあります。その結果、ワームを放置すると別の脅威がネットワーク内に侵入するリスクが生じ、2次被害、3次被害へと連鎖的に問題が拡大する可能性があります。

ボット

一般的なボットといえば、インターネット上で決められた作業を自動で行うプログラムを指します。SNSで定期的に発信したり、チャットで自動で会話したりするような便利なものです。

しかし、マルウェアの一種として定義されているボットは性質が異なります。ここでいうボットは、感染したコンピューターを遠隔操作するためのマルウェアの一種です。

企業にとってボットの脅威は特に深刻です。気づかないうちに社内のコンピューターがボットネットの一部となり、他社への攻撃に加担してしまうリスクがあります。

また、ボットネットを通じて機密情報が流出する可能性もあり、レピュテーション(評判、評価)の低下や法的責任を問われる事態にもなりかねません。

スパイウェア

スパイウェアは、ユーザーの同意なしに個人情報や行動データを収集し、外部に送信する悪意のあるソフトウェアです。その名が示す通り、デジタル世界における「スパイ活動」を行うプログラムとして機能します。

スパイウェアの特徴的な点は、自己増殖をしないため、感染に気付きにくいことです。多くの場合、正常なプログラムを装いながら密かに動作し、ユーザーが意図せずにインストールしてしまうか、あるいは正規のソフトウェアと誤認してインストールしてしまうことがあります。

企業環境においてスパイウェアは特に危険な存在です。従業員の個人情報だけでなく、顧客データや機密文書の内容まで漏洩する可能性があり、さらにキーロガー機能を持つものはパスワードや機密情報のキーワード入力までも記録してしまいます。これらの情報が競合他社や犯罪者の手に渡れば、企業の競争力低下や信頼失墜につながる深刻な事態を招く恐れがあります。

スパイウェアの影響は情報漏洩にとどまりません。PCの設定を変更してしまうケースもあり、一度変更されると元に戻すのが困難になることがあります。

このような状況は、企業のITインフラストラクチャに重大な影響を与え、業務効率の低下や更なるセキュリティリスクを引き起こす可能性があります。

したがって、企業は従業員教育や強固なセキュリティ対策の実施など、スパイウェア対策を包括的に行う必要があります。常に最新のセキュリティ情報を把握し、適切な防御策を講じることが、デジタル時代における企業の重要な責務となっています。

マルウェアが企業に与える被害

マルウェア感染は、企業に多大な損害をもたらす可能性があります。その影響は金銭的損失から信頼の失墜まで、広範囲に及びます。ここでは、マルウェアが企業にもたらす具体的な被害について詳しく見ていきましょう。

金銭的な被害

マルウェア感染による金銭的被害は、企業にとって最も直接的で深刻な影響の一つです。ランサムウェアによる身代金要求や、不正送金による直接的な損失に加え、システムの復旧やセキュリティ強化にかかる費用も膨大になる可能性があります。

さらに、業務停止による売上減少や機会損失、顧客データ流出による賠償金支払いなど、その影響は長期にわたることがあります。特に中小企業にとっては、これらの金銭的被害が致命的な打撃となりかねません。

社内情報の流出

マルウェアによる情報流出は、企業の競争力と信頼性に重大な影響を与えます。企業戦略や製品開発情報などの機密データが競合他社に渡れば、長年の努力が水泡に帰す可能性があります。

また、顧客や従業員の個人情報が漏洩すれば、プライバシー侵害として法的責任を問われるだけでなく、企業の評判を大きく損ねることになります。

この信頼低下は、顧客離れや取引先の減少につながり、長期的な経営危機を招く可能性があります。

業務停止

マルウェア感染によるシステムダウンは、企業の生産性と収益に直接的な打撃を与えます。重要なシステムが利用できなくなることで業務が完全に停止したり、データが破壊されて業務継続が困難になったりする可能性があります。

また、感染拡大を防ぐためにネットワークを遮断する必要が生じ、通常の業務フローが維持できなくなることもあります。システム復旧作業に人員を割かれることで、通常業務に大きな支障が出る可能性もあるでしょう。

これらの影響は、停止期間が長くなるほど深刻化し、顧客離れや競合他社への顧客流出など、長期的な経営への悪影響も懸念されます。

マルウェアの被害を防ぐには?

マルウェアの脅威から企業を守るためには、技術的対策と人的対策を組み合わせた総合的なアプローチが不可欠です。ここでは、効果的なマルウェア対策の具体的な方法を紹介します。

セキュリティツールの導入

セキュリティツールの導入は、マルウェア対策の基本となる重要な施策です。アンチウイルスソフトは最新のマルウェア定義を用いて既知の脅威を検出・除去し、ファイアウォールは不正なネットワークトラフィックをブロックします。

さらに、エンドポイント保護ソリューションは各端末のセキュリティを強化し、マルウェアの侵入と拡散を防ぎます。

OS・ソフトウェアは最新の状態を維持する

OSやソフトウェアの脆弱性は、マルウェアの侵入口となる可能性があるため、常に最新の状態に保つことが重要です。定期的なアップデートにより、セキュリティパッチを迅速に適用し、既知の脆弱性をふさぐことができます。

可能な限り自動更新を有効にし、管理者の負担を軽減しながら常に最新の保護を維持することが推奨されます。

特に、サポートが終了したソフトウェアは速やかに代替ソフトへの移行を検討し、セキュリティリスクを最小限に抑えることが必要です。

従業員への注意喚起と教育

技術的対策と並んで重要なのが、従業員へのセキュリティ教育です。多くのマルウェア感染は、人的ミスや不注意が原因で発生します。

そのため、従業員全員がセキュリティリスクを理解し、適切な行動を取れるよう定期的な教育が欠かせません。

具体的には、不審なメールの見分け方、安全なパスワード管理、ソーシャルエンジニアリング攻撃への対処法などを学ぶ機会を設けることが重要です。

また、インシデント発生時の報告手順を明確にし、迅速な対応ができる体制を整えることも大切です。継続的な啓発活動を通じて、組織全体のセキュリティ意識を高めることが、マルウェア対策の要となります。

被害を最小限に食い止めるためのツール導入も重要

マルウェアの手口は時間を追うごとに巧妙になっており、感染リスクを完全に断つことはできません。被害を最小限に抑えるためには、企業のセキュリティ対策もアップデートし続けていく必要があります。

定期的なデータバックアップはランサムウェア対策として有効です。また、ネットワークセグメントにより感染範囲を限定し、被害の拡大を防ぐことができます。

さらに、インシデント対応計画の策定と定期的な訓練により、実際の攻撃発生時に迅速かつ効果的な対応が可能になります。

これらの対策を総合的に実施することで、マルウェアのリスクを大幅に低減し、感染時の被害を最小限に抑えることができるでしょう。

また、マルウェア対策の一環として、マルウェア感染の防止だけでなく、感染した際にすぐに察知し、対策を講じることで被害を最小限に減らす試みも重要となります。

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著者情報

漏洩チェッカー 編集部

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