隠れ残業の実態

隠れ残業とは、勤務時間を会社へ申告しなかったり、勤務記録をせずに、残業することを指します。退社後の持ち帰り残業で、勤務実態が分からない場合も、隠れ残業の一種と言えます。

連合総合生活開発研究所(連合総研)が行った首都圏や関西圏の企業に勤めている20~64歳の会社員2,000人を対象にした調査によると、全体の30.9%(618人)が持ち帰り残業をした経験があると回答しました。また、持ち帰り残業に関して「労働時間にあたると思う」と回答した人が58.3%、「あたらないと思う」と回答した人が21.3%となっています。

参照:持ち帰り残業、3割が「ある」 連合総研 実態把握難しく: 日本経済新聞

テレワークの普及、持ち帰り残業で実態の把握がより難しく

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、2020年からテレワークを導入する企業が多くなりました。通勤時間の減少やプライベートとの両立が図りやすくなったという意見が多い中、持ち帰り残業の把握がより難しくなりました。

株式会社アイキューブドシステムズの「オフィスワーカーの労働環境とストレス」に関する実態調査によると、持ち帰り残業をしている360人に対し、会社に申告していない「隠れ残業」があると回答した人が83.4%で、8割以上の人が会社に申告せずに残業していることが明らかになりました。

参照:「オフィスワーカーの労働環境とストレス」に関する実態調査 - ㈱アイキューブドシステムズ

また、「仕事のストレスが心身に影響が出たため、医師の診察を受けた経験はあるか」という質問に対し、全体の21.0%(5人に1人)が仕事のストレスが原因で医師の診断を受けた経験があることも判明しました。

社員が健康な状態で働くためには、テレワークで1人1人の状況を把握するのが難しい状況であっても、決められた労働時間内で働いているかを把握しなければなりません。


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隠れ残業の根底にある課題

そもそも隠れ残業は、どのような要因で起きるのでしょうか。隠れ残業が起きる主な要因は、ハード(技術)面とソフト(ビジネス習慣)面の課題に分類できます。

自己申告した勤務記録との乖離が生じる

勤務時間を記録する方法は、タイムカードやICカード、パソコンによる入力などの自己申告制が基本です。前述したテレワークを採用すると、社内外場所を問わずに働くことができるため、打刻した勤務記録と実際に働いた時間との乖離が生じてしまうのです。

サービス残業をする組織の慣習

また、法令や社会的倫理よりも、組織内の暗黙のルールに従う傾向があるのが日本人の特徴であるといえます。

参考:日本人と「恥の文化」(山田隆信)

サービス残業を行うのが慣習化された組織の場合、それが当たり前の世界だと思い込んでしまうケースが多く、自身も同じように働かなければならないと感じてしまいます。

また、上司・自身の仕事が終わって退社できる状況であったとしても、帰りにくいと感じるものです。この帰りにくい雰囲気は周りにも伝染しやすく、特に直属の上司・管理職が忙しい状況の場合、部下はさらに帰りにくいと感じ、結果的に残業が多くなります。

参照:職場の残業発生メカニズム──残業習慣の「組織学習」を解除せよ - パーソル総合研究所

組織、労働者のコンプライアンス意識が高くない

組織の管理者側のコンプライアンス(法令遵守)意識が低い場合、組織として、適正な労務管理が行われないことがあります。経営者、役員、部長、及び現場の課長、マネージャーは、管理者として、適正な労務管理が求められます。

労働者の側も、就業規則で定められた時間内で働くことが求められます。しかし、就業規則や労働法を守る意識が低ければ、勤務時刻を正しく報告しなかったり、自己判断で残業時間を伸ばしてしまう場合があります。業務に対する責任感を持つのは良いことですが、まず法令の遵守ができているか、管理者及び労働者は見直すべきでしょう。

PCログは、労働時間を適正に把握する手段の1つ

そこで、隠れ残業を防止するために有効な手段が「PCログ」です。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、 使用者には労働時間を適正に把握する責務があることと定められています。

参照:労働時間の適正な把握 のために 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)

また、「その3 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置」では「特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。」とあります。適切な調査を実施するためにも、PCログの取得は有効だといえるでしょう。

PCログによって、労働時間を証明したという裁判例も

ここでは、「大作商事事件」の事案をご紹介します。

本件の被告である、大作商事の従業員が、平成26年7月から平成28年までに発生した未払いの残業等を求めて会社側へ訴訟を起こした事例です。同社では、従業員の残業時間が30時間以内になるように日頃から周知・指導しており、被告が請求した期間の出勤簿には、30時間以上の残業をしたのにも関わらず、基本的に30時間と記載されているものが大半でした。

この実際に働いていた労働時間を証明できた大きな要因が、PCログです。東京地裁は、PCログに残された記録によって、出勤簿に記載されている労働時間が正確ではないことを認め、未払い分の残業代請求を認めました。

参考:「大作商事事件」労働ジャーナル №1184号 労働判例

どうやって、勤務時間を管理するのか

実際に、どのようにPCログで勤務時間を管理しているのでしょうか。

例えば、株式会社スタメンが提供している「漏洩チェッカー」の場合、常時操作ログを取得して、社内の重要データに何らかの動きがあった際に、管理者に通知する仕組みになっています。アラートでリアルタイムで把握できるため、情報漏洩を未然に防げます。また、パソコンの電源状態(オン・オフ)を把握することで隠れ残業の防止が可能です。

テレワークの労働時間を把握して管理に役立てた事例

ここでは、テレワークの労働時間を把握して、勤務時間管理に役立てた事例をご紹介します。

Creww株式会社では、PCログを使って客観的な記録をとる仕組みを作るために「ラクロー」という打刻レス勤怠管理サービスであるを導入しました。PCのログの可視化や、管理者側で工数カテゴリーを作成したことによって、社員の労働状況を把握しやすくなりました。

算出したデータを基に、現在の業務量が適正なのかを社員にヒアリングし、社員1人1人が働きやすい環境を実現できた事例となります。

参照:事例紹介 | ラクロー

PCの利用状況を可視化して業務改善を実現した事例

続いて、PCの利用状況を可視化して業務改善を実現した事例をご紹介します。

金山国際司法書士事務所では、紙の出勤簿に働いた時間を記入する形をとっていたため、実際の労働時間が把握しにくいという課題を抱えていました。「ラクロー」を導入することで、PCの電源で自動で出退勤の記録がつけられるようになり、働いた時間を正確に把握できるようになりました。その結果、決められた業務時間内に仕事を完了させるという意識が社内全体に浸透し、残業時間を減らすことに成功しました。

参照:事例紹介 | ラクロー

関連記事:業務可視化の重要性とは?進め方やメリット、成功のポイントと併せて解説

隠れ残業のリスク

隠れ残業が常態化すると、企業側・労働者側の双方にリスクがあります。

ここでは、それぞれのリスクについて解説します。

企業側の責任を追求されるケース

隠れ残業は社員独自で隠れて行うと思われがちですが、そもそも企業側の勤怠管理や業務時間に対してのマネジメント不足で起こるケースがほとんどです。

隠れ残業が続いている状態を放置していると下記のようなリスクにつながります。

労働基準法違反につながる

業務時間外の労働に対して、企業は必ず賃金を支払う義務があります。隠れ残業で社員が業務時間外に働いていた時間を把握できていないと、残業代は発生しません。

残業代の不払いの状況は労働基準法に抵触する可能性があり、隠れ残業によって社員が身体を壊してしまった場合、労働安全衛生法にも抵触する可能性が高くなります。

企業のイメージダウンにつながる

隠れ残業が常態化が世間に知られた場合、大きなバッシングを受けることになるでしょう。世間から1度でも悪いニュースとして取り上げられてしまうと、企業のイメージダウンにつながります。また世間からはブラック企業と認識されてしまい、企業の採用活動にも大きな影響が及ぶでしょう。

労働者側のリスク

隠れ残業は企業だけではなく、労働者側にとっても様々なリスクがあります。

健康を害する可能性がある

隠れ残業する時間が増えるほど、心身の疲労が蓄積し、健康を害する可能性が出てきます。また、隠れ残業が常態化すると、仕事・プライベートのメリハリもなくなります。隠れ残業によって、リフレッシュする時間がとりにくくなったり、人間関係が悪化したり、様々なデメリットにつながる点は認識しておきましょう。

会社からの評価に対して不満に感じる

隠れ残業を常日頃行っていると、「こんなに働いているのになんで評価してくれないのか」と会社からの評価に対し、不満に感じてしまうケースが多くなります。

このような状況がずっと続くと、次第に仕事へのモチベーションも下がってしまうでしょう。

まとめ

勤怠管理は、社員の自己申告に加えて端末のデータでも判断する時代になりつつあります。

隠れ残業は社員の健康を害する可能性もあり、最悪の場合だと過労死につながることもあります。社員の労働時間を適切に把握するためにも、PCログによる労働時間の可視化を効果的に活用しましょう。

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漏洩チェッカー 編集部

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