テレワーク管理の5つのポイント

テレワークの管理、監視の方法は、コロナ禍を経て様々な方法が生み出されてきました。本稿では、テレワーク管理のポイントを5つに整理し、様々なツールとその種類を整理していきます。

1.テレワークの目標と期待値の明確化

従業員に対して、毎月、毎週あるいは日次の単位で、どのような目標値をおき、どのような業務に取り組むことを期待しているのかを明確化することが求められます。

評価の対象となる指標や、目標値の水準を事前に共有しておくことで、期末の評価等もスムーズになるでしょう。

2.テレワークの勤怠管理

テレワークの勤怠、労務管理を適切に行うには、時刻データを収集する仕組みが求められるでしょう。従業員の自己申告による「打刻システム」を採用している会社もありますが、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、次のいずれかの方法で、始業、終業時間を確認することと記載されています。「使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること」、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」。

テレワークでは出社がないため、自己申告制の勤務時間が正しいのかを確認することが難しくなります。このため、パソコンの稼働ログを利用するいった手法を使って、客観的な記録を取る等の手法が有効です。

3.テレワークのタスク、プロジェクト管理

テレワークにおいて、プロジェクトやタスクの進捗を可視化し、共有することは、テレワークの成功に欠かせないでしょう。テレワークの業務管理方法として、タスクやプロジェクトの進行を可視化する仕組みを構築する必要があるでしょう。
同じ場所で働いていないからこそ、状況の共有や、プロジェクト推進の障害となる点を周知することで、チームとしてプロジェクトに取り組むことができるでしょう。

4.テレワークの情報管理

4-1.テレワークの情報共有

テレワークにおいて大きな課題となるのが情報共有です。テレワークは同じ場所で働いていないことから情報の受発信が難しく、うっかり重要な情報を聞き逃してしまったことが原因で、タスクやプロジェクトの進行に支障をきたす可能性があります。従業員への情報共有漏れによって業務へ支障が出ないようにする仕組みの構築が求められるでしょう。

4-2.テレワークのセキュリティ

またテレワークは個々の作業環境によってセキュリティ面にばらつきが生まれることから、情報の持ち出しや漏洩といったセキュリティリスクが高まります。個人情報や機密情報は外部へ持ち出さない、漏洩させないことを徹底し、サイバーセキュリティに関する従業員教育を行うとともに、万が一の事態に備えて情報が漏えいするのを予防する仕組み作りも必要でしょう。


総務省のテレワークセキュリティガイドラインによると、テレワークセキュリティにおいては「ルール」「人」「技術」のバランスが取れた対策が有効とされています。大切な情報を守るためのルールを策定し、従業員がこれを遵守し、必要に応じて利便性・セキュリティ性の高いツールなどを導入することによって、適切に情報管理ができるようになるでしょう。

5.テレワークの健康管理

オムロン ヘルスケアが2020年に公開した「テレワークとなった働き世代1,000人へ緊急アンケート」 によると、テレワーク開始後、31%の人が「肩こり」「精神的なストレス」「腰痛」などによって身体の不調を感じたと回答しています。不調の度合いは多くの人が「軽度」と回答していますが、4人に1人(約27%)が「重度」と感じていることも分かりました。また30代女性の8割以上は不調への対策を実施しているのに対し、40代男性で対策をしているのは4割以下にとどまっていることも明らかになりました。

運動不足、長時間同じ姿勢でいること、コミュニケーション不足等の環境上の課題に対して、従業員の健康を管理することは、事業運営上のリスク低減にも繋がるでしょう。

テレワーク管理の5つのツール分類

テレワーク管理ができるツールにはさまざまな種類があり、管理する内容や条件などによって分類は異なります。近年は複数の機能を併せ持つツールも多く登場していますが、ここではテレワーク管理ツールの機能を5つに分類して整理していきます。

1.勤怠管理ツール

従業員が自己申告によって始業・終業を打刻し、規定時間を大幅に超過して残業している場合などにはアラートを表示する機能を持っているツールです。フレックスタイム制や夜勤などの交代制を導入している企業では、従業員の勤務時間を管理するのが困難ですが、勤怠管理ツールによって個別の勤務時間にも対応できるようになるでしょう。また勤務時間などの就業規則を遵守することにより、従業員のコンプライアンス意識の向上にも役立ちます。

自己申告とともにPCの利用開始・終了時間を自動的に記録し、申告と実態の乖離を把握できるといった種類のものもあります。テレワークでは自己申告で「退勤」としたうえで業務を続ける、いわゆる「隠れ残業」が多くなる傾向があるため、自己申告とは別の方法でも勤怠を確認できれば、長時間労働の抑制にも効果を発揮します。

企業によっては、勤怠管理ツールとは別に、チャットツールなどで始業・終業時間を上司に報告するところもあります。ツールと運用をうまく併用することで、適切な勤怠管理が可能になるでしょう。

2.業務可視化ツール

テレワークにおいて、従業員が規定の勤務時間内に業務をしっかりと行っているかどうかを確認できるツールです。オフィスツールやWebブラウザ、チャットツールなど、アプリケーションの利用状況を可視化して分析できるようになっています。これにより、「PCは起動しているもののサボっている」という従業員を把握でき、対応を検討できるでしょう。

ツールによっては「キーボード打鍵回数」を記録できるものもあります。たとえば、業務では使用頻度の低い単語をNGワードとして設定しておくことで、業務中のサボりや不正利用を予防できるでしょう。また従業員が機密情報を打鍵していた場合には、内部不正による情報流出を予防することが可能になります。

アプリの利用状況を可視化することによって、誰がどの作業にどの程度の時間を使っているかを把握できます。これにより、時間のかかっている作業の人員を増やす、ツールを導入して効率化するといった業務改善にも繋がるでしょう。
さらに、「いつもより作業に時間がかかっている」という従業員がいたなら、モチベーションが低下していたり、身体的・精神的コンディションが不調になっている可能性があります。このように従業員のコンディションを早期発見し、健康管理できるツールとしても役立つでしょう。

3.アクセス管理ツール

従業員がテレワークにおいて、どのWebサイトへアクセスしたか、何のファイルをダウンロードしたか、どのデバイスと接続したか、いつ接続したかなどの情報を記録するツールです。ウイルスやマルウェアはインターネット経由で持ち込まれることから、インターネットのアクセス監視をすることで、情報漏洩リスクを下げる効果が期待できるでしょう。

業務とは関係のないデバイスに接続している従業員を早期に発見できれば、不正操作や情報流出といった内部不正の予防としても効果を発揮します。万が一にも従業員によって情報流出が起こった際には、問題発生や不正の記録として関係先へ提出することもできるでしょう。

4.操作ログ管理ツール

テレワークにおいて、アプリケーションの利用やWebサイト閲覧、ローカルファイルの編集・保存・削除といったあらゆる操作を記録し、自動アップロードによってログとして保存するツールです。OSのアップデート管理やシステム利用制御などにも役立ちます。 PC操作のログ管理を行うことによって、内部不正や情報漏洩を未然に防ぐことが可能になるでしょう。また不正を検知した際に、誰のPCにおいてどのようなルール違反が何件発生したかといった内容が確認できれば、万が一インシデントが発生しても状況把握が容易になるでしょう。 そのほか、PC操作を画像スライド形式で記録するタイプや、不正行為をレポートで定期的に確認できる機能を搭載しているものもあります。

5.IT資産管理ツール

テレワークにおいて従業員が使用するPCのハードウェア情報、インストールされているソフトウェア情報などを収集し、ライセンスやアカウントなどの利用者情報やメモと紐づけて管理できるツールです。

テレワークで使用するPCのハードウェアおよびソフトウェアは、万が一のセキュリティリスクに備え、常に最新かつ安全な状態に維持しておく必要があります。しかし従業員すべてがこれを徹底できるとは限らず、端末ごとに異なるバージョンやライセンスを把握するのは困難です。しかし資産管理ツールによって資産を一元管理すれば、ハードウェアとソフトウェアを最新の状態に維持できるようになり、セキュリティ対応も簡単にできるようになります。さらに業務において新たに必要となるソフトやツールの選定・導入の際にも判断しやすくなるでしょう。

まとめ

コロナ禍を経て広く普及したテレワークですが、生産性や効率を維持しつつ業務内容や働き方に見合った従業員の管理・監視をするためにはまだまだ課題が多く、事業運営側には継続した対応が求められます。

この記事でご紹介したテレワーク管理における5つのポイントを意識したうえで、必要に応じてツールを導入しながら、着実に対策を進めていきましょう。